
この本を読んだ動機
本書は「数年に一度の問題解決の名著」「ロジカルシンキングの決定版」と称されるほど評価が高い名書です。
イシューとは聞き慣れない用語ですが、解くべき課題のことを指しており、知的生産のシンプルな本質として「課題設定=イシュー」から始めることを説いています。
生産性を高めるための思考法や問題解決法ではなく、課題設定にフォーカスした本書に興味が湧き、手に取りました。
こんな方におすすめ
生産性を高めたいと考えている方、成果を出しているが圧倒的な労力と時間を費やしている方は本書での問題設定手法が参考になると思います。
MECE、ロジカルシンキング、フレームワークなどの「問題解決」に詳しい方は、課題設定にフォーカスした本書の手法でさらなる成果が期待できます。
イシューとは何か
生産性とはインプット(投下した労力と時間)に対するアウトプット(成果)の比率で表されます。
では、多くのアウトプット=バリューのある仕事とは何か?
それは「イシュー度(課題の質)」と「解の質」の両方が高い仕事を指すと説いています。
イシューとは「決着のついていない問題」「根本に関わる問題」「白黒がはっきりしていない問題」を指します。
イシュー度が低い仕事はどれだけ解の質が高くても、顧客やクライアントから見た時の価値はゼロに等しいです。
大量の仕事をすることで、バリューを上げるような行動は避けるべきです。
本書では「解の質」を高めてから「イシュー度」を高める「犬の道」は踏み込んではならないと説いています。
圧倒的に生産性の高い人のアプローチは本のタイトルにもあるように「イシューからはじめる」アプローチをとります。
「限界まで働く」「労働時間で勝負」することはレイバラー(労働者)の思想です。
プロフェッショナルは、どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるかによって評価され、存在意義が決まります。
世の中で「問題」と言われていることは、実はビジネスや研究で取り組む必要のない問題であることが多いです。
本当に白黒はっきりさせる問題は、全体の2〜3%程度と説いています。
イシューの見極め方
テーマ整理ではなく、具体的な仮説を立てることから始めます。
仮説を立てる理由は「答えを出し得るイシューにする」「必要な情報、分析すべきことがわかる」「分析結果の解釈が明確になる」ためです。
そしてイシューは絵や図ではなく言語化を行い、概念をきっちりと定義づけることが必要です。
言語化するためには「主語と動詞を入れる」「WHYよりWHERE WHAT HOW」「比較表現」がポイントで、曖昧さが消えて何に答えを出そうとしているのか明確になります。
本章では良いイシューの3つの条件が挙げられています。
イシューだと考えるテーマが本当に既存の手法、あるいは現在着手しうるアプローチで答えが出せるか見極めることは重要です。
取り組んだ後に検証方法が崩壊した時には時間と手間の点で大きなダメージになりかねません。
また、イシュー特定のための情報収集の3つのコツが挙げられています。
間接的な報告書や論文などの二次情報ではなく一次情報に触れることは、本当のことに対する肌感覚と明確な仮説を立てるための指針を与えてくれると説いています。
通常のやり方ではイシューが見つからない場合は、イシュー特定のための5つのアプローチが示されています。
イシューを見極めるための具体例(Amazon)
アマゾンの社内で行われるプレゼンは「パワポ」が禁止されているようです。
パワポの使用禁止は、ジェフベゾスが発令したという逸話があります。
パワポによる資料が紙芝居のようなビジュアルであり、具体性に欠けることが理由だそうです。
代わりに「ビジネスドキュメント」が用いられています。
A4紙1枚または6枚の形式であり、基本的には1枚で簡潔にまとめるのがルールのようです。
1枚の中で論旨を構築するためには、無駄を削ぎ落とす必要があります。
そして文章の中には適切な動詞があり、それぞれの段落にはトピックがあります。
明確でクリアな思考がないと1つのストーリーとして構築がされません。
また、絵や図などの概念的な表現ではなく、それらを言語として定義づけることが重要です。
この形式でレポートを作成することで、自らの考えを整理し思考が深まり、曖昧さが消えて何を説明するのか明確になってきます。
ジェスベゾスが求める文章力の高いA4紙1枚のレポートにより、イシューが自然と見極められるのだと思います。
まとめ
生産性はインプットに対してどれだけ価値のあるアウトプットが出せたかで表現されます。
本書では成果ではなく、課題の質(イシュー)に着目されているところが特徴です。
設定した課題に対してロジカルに解決するための手法も丁寧に示されています。
プロフェッショナルの世界では努力は一切評価されません。
そのためにも「イシューからはじめる」ことで価値を生み出すことが重要であることを再認識しました。