こんな方におすすめ
- AIやロボティクスなどのテクノロジーに興味、関心がある。
- テクノロジーとの共存する社会について、脅威や可能性を感じている。
- 自身の仕事の将来性について悩んでいる。
動機
AIはディープラーニングの登場によって飛躍的に進化を遂げています。
様々な分野でAIの能力が人類を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が到来する可能性を秘めています。
また手足となるロボティクス技術も進化しています。
人はもはやロボットとの共存が不可欠ですが、近い将来に向けてやるべきことについて説かれています。
その内容に興味があり本書を手に取りました。
対象
AIやロボットについて、脅威と感じている人や可能性を感じている人の両方の方にとって参考になると思います。
本書では世界的な研究者との対談などによりAIやロボットの将来性について示されています。
そして生活やお金のために働くのではなく「好きなこと」によって働くことをAIやロボットはサポートしてくれます。
概要
AIがなければ社会インフラは成り立たない状況になりつつあります。
それに対してAI脅威論も噴出しています。
人の知性や成長力を考慮しつつ、AIのことを正しく学び人間社会に何をもたらすのか、自分がどう向き合うのか考える必要があります。
そして、AIを制御する意識を捨てないことが必要です。
AIの画像認識の技術は飛躍的に向上しました。
写真加工アプリや街の警備カメラで犯罪者の管理に用いられるなど、すでに人間を超えている場面も見られます。
身体を持ち、リアル社会とインタラクションしていかなければ、AIの進化にも限界があるかもしれない。
本書引用P37
物を運ぶ作業ひとつをとっても、人間の脳の中で大量の情報処理がなされています。
ロボットの目(カメラ)や耳(マイク)の性能は飛躍的に高まっています。
体の中でも手が重要です。
しかし人間の手によって得られている機能や情報は、まだ人間の代替レベルには遠く及んでいません。
3本指でも10本指でもなく5本指の手を開発することがバランスや物を持ち替えるバランスを考える上で重要です。
そして、手の開発においては日本が世界のどこよりもリードを取れるチャンスは大きいです。
現在のAIに高性能の手が搭載されたら、次世代の一大産業革命が起きるはずです。
人間を知るために、人間の能力をアンドロイド(見た目がより人間に近い人型ロボット)に置き換える技術の研究が進んでいます。
それが他の様々なロボットの研究開発にも貢献し、ロボット技術の進展につながります。
マツコロイド、エリカといったアンドロイド、CG女子高生サヤ、女子高生AIりんな、子供型アンドロイドibuki(イブキ)など、様々なロボットが登場しています。
ロボットが人の仕事を引き受ける自動化の流れは、AIの進化と呼応していると言える
本書引用P79
ただし、人の仕事を担うロボットが、全て人間の形をしている必要は全くありません。
例えば精神疾患を抱える患者は人と関わりたくない拒絶感があります。
そのような人たちの治療にカウンセラーよりもカウンセリングデータをもつAIロボットの方が役立つかもしれません。
人付き合いが苦手な若者向けのコミュニケーションロボットや、高齢者介護向けの需要が高まると考えられます。
そして、自分自身の分身のアンドロイドに働かせる時代が到来するかもしれません。
第3章ではパーソナルモビリティについて説明がされています。
パーソナルモビリティとは一人乗りを前提とした移動支援マシンです。
一般的によく知られているのはセグウェイです。日本の大手企業も積極的に開発を進めています。
しかし、日本は法規制の問題で公道での実証実験ができません。
実証実験を繰り返さなければ、一般的に普及するような製品にはなかなか仕上がりません。
そのため、日本企業は競争力がなく存在感を失いかけています。
ただの乗り物ではなく、パートナーロボットとして広く普及させるためには、機能的であるだけではなく「楽しさ」がないといけない。
本書引用P109
人間は「心」と「体」と「社会」からできているという考え方があります。
心をワクワクさせるパートナーとしてパーソナルモビリティには期待が寄せられます。
また、乗車中の快適さを追求したり移動する個室として進化すると考えられます。
パーソナルモビリティにより移動時間をフルで有効に使えます。
それこそ理想の社会インフラになり得ます。
グーグルやアマゾンが莫大な予算をかけてパーソナルモビリティの研究開発に取り組んでいます。
また、パーソナルモビリティは高齢者の移動手段として爆発的に普及が進んでもおかしくはありません。
パーソナルモビリティにより行動を促し、活性化した高齢者がもたらす経済効果は計り知れません。
防犯上の課題が解決されれば、無人コンビニの仕組みはやがて規模の大きな店舗へと広がっていくだろう。
本書引用P129
日本は少子高齢化で人手不足問題が深刻だと騒がれています。
しかし、本来人がやらなくても良い仕事や人に任せないくていい仕事を人がやっている面もあります。
従って、ロボット化を進めないから人手不足になるとも言えます。
調理ロボット、配達・配膳ロボット、監視ロボットなどが普及すると、人間の役割は一部の接客だけになるはずです。
自動化の波は、すごい勢いで外食産業の労働環境を変えていくはずです。
投資や発掘もAIでリスクヘッジする時代です。
これからはデータの価値がますます高まります。
多くの有益なデータを持つものが富裕層に並ぶか、それ以上の権力を発揮することになります。
そしてAIから人が教えてもらう機会も増えてきます。
将棋の藤井聡太はAI搭載の将棋ソフトで練習を重ねてきました。
急速に進化しているテクノロジーが、突き抜けた能力を発揮する若者を育てています。
人間の先生より、AI教師の方が筋が良いのは間違いありません。
情緒的な指導に長けている良い先生も必要ですが、効率よく指導する能力はAI教師の方がはるかに高いです。
「勘」とか「経験」とか、適当な基準で指導してくるような人間は、全体の士気や生産性を落とすだけの存在だ。
本書引用P155
教育現場においては、AI教師を活発に導入していくべきです。
人間の指導には精神論や科学的根拠に基づかない指導がついてきます。
教育現場だけではなく、スポーツやトレーニングの世界にもAI技術が採用されていくと考えられます。
AIやロボットにもきっと深い愛着は宿る。愛着がない限り、人のパートナーとしての役目を引き受けるのは難しい
本書引用P161
今後、「愛着」の答えがビジネスチャンスになり得ます。
一緒に過ごした時間の長さなのか、可愛らしいデザインなのか、人と親和する本質的な何かを見出すことで、AIとロボットの普及がさらに後押しされます。
私たちが今問われているのは「仕事が奪われる」とかいう次元の問題ではない。
本書引用P164
AIやロボットによってリデザインされる世界をどう生きるかという話だ。
働く根源的なモチベーションとは何かを考える必要があります。
「生活のため」、「お金のため」ならAIやロボットに何かを奪われる人生となり得ます。
働かなくても良い世界で、モチベーションを持ち何かの行動を起こせる人が生き残れるはずです。
GDP(国内総生産)に組み込まれているとは言えない「遊びや趣味」が仕事に成り代わってきています。
そして、それらは従来的な仕事より儲かるようになってきています。
人間がやっていた「財を成すことが目的の面倒な労働」をAIやロボットが肩代わりしてくれる時代がやってくる
本書引用P179
これからは「やりたいことが見つかるまで、探し続けること」が大事です。
産業革命時には失業の恐れを感じた労働者が起こした機械の打ち壊し運動であるラッダイト運動が起きました。
AIやロボットに対して、ラッダイト運動を起こさないことです。
テクノロジーの利用と共生を自分たちで考える必要があります。
産業革命後に様々な仕事ができていたように、テクノロジーは新たな仕事を生み出します。
まとめ
本書のタイトルは「僕たちはもう働かなくていい」ですが、決して楽してお金を稼ぐといった類の内容では有りません。
働くとは「人を動かす」という文字ですが、人ではなくロボットが代替する時代がすぐそこまできています。
従来のお金を稼ぐための労働はロボットによって置き換えられていくはずです。
そのような時代では、AIやロボットなどのテクノロジーを脅威ととらえず、共存・共生を考えることが大事です。
自分が何歳であろうとも、新しい知見を得る好奇心を持つことが重要です。
狩猟民族のように鋭い感性と柔軟性を使いこなすことがこれからのAI時代に求められるスキルです。
テクノロジーを使いこなし、そのために「行動」することが重要であると感じました。