あらゆるものがコモディティ化した現代では、強い輝きを放つのはちょっとすごいものは埋没し、「超すごいもの」が脚光を浴びます。
機能で差がつかない時代には思想で差がつきます。
そこでクリエイティブ=非連続的な成長を促し、新たな価値を生み出す多面的な思考法が求められます。
本書では、人気クリエイティブディレクターである著者が「思想」と「実装」による思考法から組織論まで、実務に展開できる思考法を記しています。
本の概要
クリエイティブとは何か
本書ではクリエイティブとは「非連続的な成長を促し、新たな価値を生み出す多面的な思考法」 として定義しています。
そして、クリエイティブは価値の生産と価値の発見の2つのレイヤーを持ちます。
既存のマーケットでのパイの奪い合いではなく、新しい市場が生み出されます。ここにクリエイティブの本当の役割があります。
新たな価値を生むための真ん中の考え方をコアアイデアと呼びます。
コアアイデアとは物事の本質を見抜いた上で状況を一変させる考え方です。
それは衝撃を伴うような、人間の根源的な欲望や感情に触れるものでなくてはなりません。
モラルと教養という基礎力
クリエイティブに必要な要素として、 モラルと教養というベースがあり、戦略、表現/アクション、人間力の3要素とそれぞれに紐づく具体的な力を兼ね備えていることを挙げています。
そして、モラルは常にアップデートして、時代のモラル感を高い感度で身につける必要があります。
教養とは総合的に社会を俯瞰できる知性を指します。
モラルと教養は努力して意識的に身につけていくべき素養です。
高い評価を受けている作品は普遍的な感情がうまく表現されています。
戦略 コアアイデアをどう生むか
本質発見力とは、シンプルに言えばこれってこういうことですよね?と世の中の大きい意味に置き換えられる力です。
AはBである。という本質に根差した変化のきっかけを発見するコツを3点挙げています。
ポイント
- 社会に対してどうな意味があるか?
- 未来で広がったらどうなるか?
- 自分にとって、あるいは熱狂しているユーザーの人生のとってどんな意味があるのか?
本質を掴む効果的なアプローチとして、抽象化のプロセスがあります。
世界の複数性に、目に見えない世界に気付く多面的な思考力がクリエイティビティの正体です。
他者に深く寄り添って傷ついたり喜びを感じたりした経験の多い人は 人の心を動かすものは何か?というクリエイターに必要不可欠なセンスが磨かれています。
センスとは経験値から来る咄嗟の判断力です。
多視点の感度を高めるために、圧倒的な量のコンテンツに触れる必要があります。
コアアイデアを実装するチームビルディング
本書では、アウトプットが個の能力の総和ではなく、積になるチームが良いチームの定義としています。
チームビルディングのポイントとして次の3点を挙げています。
ポイント
- チームが持つ機能とチームに求められている目的を一致させる。
- チーム内における人材の配置を正しく行う。
- チームの空気を気持ちの良いものにする。
安心して何でも話せる心地よい信頼関係のある空気がチームの総合的なパフォーマンスを高めます。
また、コアアイデアは単独もしくは少数で作ることを勧めています。
初期段階で多視点が無秩序に持ち込まれると、折角の斬新なコアアイデアがつぶされやすいです。
革新的なコアアイデアは単独の深く沈潜する思考、もしくは少人数の本質発見力の高いもの同士から生まれます。
考察 人の感情に触れる逆マーケティング
現代では昔に比べて幸福で快適な生活を送るのに、多額のお金は必要なくなっています。
テクノロジーによって、人間にとって面倒な仕事はAIやロボットが引き受けるようになりつつあります。
そのような時代においては、人の心を埋め、熱狂に引きずり込む感動や共感が必要になってきています。
金銭的な価値よりも内面的な価値(共感、熱狂、信頼、好意、感謝など)に着目すべきです。
逆に内面的な価値を無視した行動、言動によって炎上を引き起こす事例も多いです。
また個人の発信力が世間に与える影響も大きくなっています。
有名人でなくとも、SNSで共感を生み想像以上の拡散力を生むケースもあります。
個人の行動、失言によって、企業のブランディングを著しく損ねる事例も少なくありません。
また、Youtuberは意図的に炎上させて、再生回数を伸ばす事例も多いです。
共通にして言えるのは、クリエィティブにおけるモラルと教養の基礎力の欠如と思います。
炎上により再生回数を伸ばす目的は達成すると思います。
しかし、個人または関係者、関係企業はブランドを損ねます。
意図しない炎上であれば、真摯に受け止めて感情に訴えかけるように謝罪すべきでしょう。
わざと炎上させている場合には、淘汰される時間も長くは無いでしょう。
まとめ
現代ではエッセンシャル消費として、消費意欲の減衰ではなく厳選が起きています。
そしてブランディングにおいてはステイタスよりスタンスが重要視されます。
企業が社会と向き合う思想を反映させながら行動でスタンスを示す必要があります。
今の時代はアルゴリズムによって、人は知りたい情報にばかり接するようになっています。
個人がクリエイティブを発揮するためには、自ら変化の主体になるという意思を持ち、意識的に外の世界にアクセスする必要性を感じました。