テクノロジーの進化によってあらゆる製品の機能が成熟しており、良いものだけではモノが売れない時代になってきました。
また、インターネットの普及によりYoutubeやInstagramのスタイルは模倣されて同じようなもので溢れています。
このようなモノも人も埋もれる時代の新しい稼ぎ方が、プロセス自体を売るプロセスエコノミーです。
本書ではプロセスエコノミーの価値と仕組み、実践方法や事例が述べられています。
また、プロセスエコノミーが起こす弊害も興味深いです。
本記事では本書の概要と、本を読んだ私の考察を紹介しています。
ぜひご覧ください!
本の概要
なぜプロセスに価値が出るのか
30代以下の乾けない世代は生まれた時から社会に無いものがない時代で育ってきました。
この世代は達成や快楽を満たすことに重きを置いていません。
物質的なものより、内面的なコトに価値を感じます。
これからの社会は役に立つより意味があることの方が価値があると考えられます。
物やサービスが持つ機能価値は輝きを失い、感情価値や参加価値が光を増していきます。
お金を取る必要がなくなるくらい、物やサービスの価格が安くなっています。
そのような時代にはプロセスによってお金を稼ぐ発想を持っているかが重要となります。
人がプロセスに共感するメカニズム
プロセスエコノミーを回すエンジンとなるのは「利他の心」です。
自分の私利私欲では共感が生まれません。
誰かを喜ばせるビジョンのもとに、みんなで助け合い、協力しあって進んでいくことが重要です。
人間というのは本能的に、他人とプロセスを共有することに喜びを感じます。
主義主張を超えて、繋がることができる生き物なので、プロセスエコノミーは人間本来のメカニズムと非常に相性が良いのです。
プロセスエコノミーの実践方法
プロセスエコノミーではなぜやるか、哲学、こだわりといったWHYが大事です。
プロセスにWHYがないと、模倣されてしまい、安売り競争の世界に巻き込まれてしまいます。
例えば楽天ショップでよく売れている店舗は以下の3つの特徴があります。
ポイント
- マイクロインタレスト(自分ならではのこだわり)
- コミットメント(やりきる責任感)
- 弱さの自己開示(ちょっとした失敗)
これらは人がWHYを持って何かに向かう時に溢れ出すポイントなのです。
プロセスエコノミーの実例集
靴のネットECサービスを展開するZappos(ザッポス)が実例として挙げられています。
カスタマーサービスの“神対応”が大きな話題を生んでおり、他社が真似出来ないような独自の企業文化を築いていることでも良く知られている企業です。
今や「全米のビジネスマンで知らない人はいない」というくらい、注目されている企業です。
広告宣伝費や流通経費を投じることもなく、このWow体験といったプロセスに共感したリピーターから靴を買ってもらえるようになっています。
「北欧、暮らしの道具店」も事例として挙げられています。
自分なりのこだわりのある人が商品を買う場所としてとてもうまく設計されています。
シンプルだけどおしゃれな北欧流の生活にお客さんは憧れを持っています。
そこで、オリジナル動画を制作し、その世界観に浸れるドラマシリーズを展開しています。
動画で商品に込める思いを共有し、そのストーリーを楽しむことができます。
考察 機能的価値と意味的価値
イノベーション研究領域で著名な経営学者である延岡健太郎は、MITで技術経営の概念の生みの親である、エドワード・ロバート教授が定義付けた「Innovation=Invention+Exproitation」に対応する概念として、「Value Creation(価値創造)」と「Value Capture(価値獲得)」を用いています。
新技術によって高い機能と品質を持った優れた製品を開発して価値を創造することと、そこから自社が利益や付加価値として価値を獲得することの両方が重要であり、両者の実現には異なるアプローチの必要性を説いています。
顧客価値は機能的価値と意味的価値に分類することができ、客観的な評価基準による機能やスペックを超えて、顧客との間で共創され、顧客が主観的に意味付ける価値を意味的価値と定義付けています。
意味的価値は顧客も気づいていない潜在的な価値であり、暗黙知の特徴を持っています。
プロセスエコノミーとは意味的価値の創造とも密接に関連していると考えられます。
考察 プロセスエコノミーの弊害が起こす炎上
本書ではプロセスで稼げてしまうと、本来のWHYを見失ってしまう可能性を指摘しています。
プロセスを上手に開示することで実力以上に資金やファンを集めて、結果的にチャレンジのインフレが起きて破綻します。
不適切な動画をSNSにアップする「バイトテロ」や、著名人がyoutubeの再生回数を稼ぐために不適切な発言で炎上する例が相次いでいます。
これらはプロセスが過激化して、プロセス自体に自分の人生が操られてしまった事例とも言えると思います。
まとめ
本書の末尾にスマートシティと20 minutes cityとして、プロセスエコノミーとの関係性について述べられています。
オンラインで人々が繋がれば東京も田舎も変わらず、十分な生活を果たすことができる時代です。
農作物や新鮮な食材、観光資源など各コミュニティの個性を売りにし始めることで差別化がされます。
スマートシティとプロセスエコノミーを掛け合わせることで、限界集落とバカにされていた地方都市でも十分都会に対抗できるのです。
これからの時代は、正解主義のゴールドリブンではなく、プロセスを楽しむプロセスエコノミーの方がこのような社会的課題を解決するのに適しているのかもしれません。
番外編 プロセスエコノミー関連本5冊
本書ではプロセスエコノミーを考えるための補足として様々な本が引用されています。 多数の本が引用されていますが、中でも注目すべき5冊を取り上げます。 いずれもベストセラーでおすすめの本です。
モチベーション革命
プロセスエコノミーの著者である尾原さんが書いた本です。
必要な家電が揃い、娯楽も充実している「乾けない世代」について論じられています。
ニュータイプの時代
プロセスエコノミーの中で取り上げられている書籍です。
本書ではこれからの社会では「役に立つ」より「意味がある」ことの方が価値があると指摘されています。
マーケティング4.0
近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップコトラーの書籍です。
マーケティング4.0とは経験価値思考のマーケティングを指しており、プロセスエコノミーの重要性を裏付けています。
ゼロ 何もない自分に小さなイチを足していく
プロセスエコノミーでは人がプロセスに共感するメカニズムとして本書を例に挙げています。
本書ではオバマ大統領の演説を参考にME WE NOW理論と名付けています。
若い女性や主婦など、堀江さんの本来の客層以外の人にも共感されて、50万部を超える大ベストセラーです。
科学的に幸せになる脳磨き
プロセスエコノミーは人々の利他の心をエンジンとします。
人間の本来の欲求と合致している仕組みです。
脳の島皮質という部位を鍛えて、脳全体をバランスよく協調的に働かせることが、その人の人生を豊かに幸せにします。